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文字通りの掃き溜め。覚書とも、下書きとも。
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いわゆ……(略 / 笑)。
これでおしまいです。

ファンタジー系パラレルにつき、苦手な方は回避推奨。




 いつの間に集まってきたのか、広場に通じる道にはたくさんの影があり、皆レツたちのことをじっと注視していた。その中から、声の主らしき壮年の男が姿を現す。
「あの服は」
「神官だね。この街の人かな?」
 その人物の身に纏う独特の衣装に、リョウが低く声を漏らす。応じるように頷き、レツもまた声を落とした。だが、彼はそんなことにはまるで気づいた風もなく、憎々しげな視線をJへと据えている。
「また性懲りもなく魔物をつれてきおったか!この街には一歩も立ち入るなと、そう言っただろう!?」
「ちょっと待てよ、おっさん!だって、Jは――」
「ゴウくん」
 腹の底から絞り出されるその声に、ゴウは、それは勘違いだと慌てて口を挟む。だが、その口上は当人であるJの声によって阻まれた。冷ややかさを通り越し、聞くものを切り刻むような冷徹な声に、ゴウは思わず気圧されて口を噤む。
「あなたが彼らの子供たちをいたずらに殺めたのですか?」
「話を逸らすな!お前のような穢れた存在が足を踏み入れていい場所ではないのだ、この街は!」
 神官のいいように、レツたちは怪訝さと不快感をもって眉をひそめるが、Jは気にした様子もない。
「質問に答えてください。あなたの仕業なんですか?」
「そんなこと、私は知らない」
『せめて、もう少しましな言い訳を考えればいいものを』
「――っ!?」
 心底不機嫌そうなイーファの声に、神官をはじめ、場に居合わせてものは皆おののいてあとずさる。
『お前が己の犯した罪に気づいていなかろうと、魂は語る。汚らわしい。かほどの汚れきった魂は、見たことがない』
「返してください」
 イーファの言葉を手で制し、Jは淡々と告げる。
「子供たちのコアを、返してください。魂と一緒に送ります」
「ふんっ、そんなもの、とっくに売り払ったあとだ」
 偉そうに言い放たれ、Jの瞳が剣呑な光を帯びる。
「金欲に負け、正しく公平に世の理を説くべき神官たるあなたが、理を曲げたのですか!?」
「理を曲げてなどいない。あれらは森で人を襲う獣だ。災厄の種を一掃したかっただけだ。いったい何が悪い?」
 神官の言い分に、黙っていられなくなったレツが思わず口を挟むが、相手に悪びれた様子はない。
「殺しても殺してもどうせ増える。別に、問題はないだろう」
「そういう話じゃないでしょう!」
 わなわなと震え、言葉が見つからなくなったレツをちらりと見やり、Jはもう一度、大きく息を吸ってから声を紡ぐ。
「では、屍は?」
「焼き払ったに決まっている」
「浄化の炎で?」
「そんな気を遣うべき相手ではない。それより、問題はお前だ!今回という今回は我慢の限界だ!街には立ち入るなという言葉を守れないなら、この近隣から立ち去れ!!」
「言われなくても、そうするつもりです」
 話を蒸し返した神官に、Jはあっさりと首肯した。
「こんな穢れた風の澱む土地にいたら、こちらの魂まで歪んでしまう」
 吐き捨てるような言葉と共に、Jは杖を眼前に持ち上げる。


 皮肉げな笑みをJが口の端に刻むのと、杖の先に白銀の光が集まるのはほぼ同時。
「知っていますか?魂は呼び合うと」
「何?」
「おかしな話です。魂を視ることもできないほどに穢れきったあなたが、なぜ神官などという役職についているのか」
「貴様、私を愚弄するのか!?」
 淡々と告げられる言葉に、神官の顔は真っ赤に染まる。だが、Jは言葉を止めようとしない。
「コアがないなら、魂を引き寄せることができない。でも彼らは子供たちと共にありたいと願っている」
 深い蒼の瞳には、純粋な悲しみだけが満ちていた。
「あなたの魂のよどみにはまってしまった子供たちの魂でも、彼らは愛しいと思っている。ならば、命尽きるその瞬間まで、共に抱くのがあなたの責任でしょう」
「なにを言っている?そんな御託はどうでもいい!さっさと出て行け!!」
「言われずとも、と、さっき言ったでしょう?」
 深いため息と共に、Jは短く呟いた。
「あなた方の求める魂は、そこに。依りつき、そして合一するといい」
「!?」
 言葉に促されたのか、杖にまとわりついていた光は神官の体を包み込み、そしてその中に吸い込まれていった。声を失ってその一部始終を見守っていた神官は、光が納まると同時に悲鳴をあげてその場にうずくまる。悶え苦しむ姿にざわめきが走るのを、Jはただひとり、なんの感慨もなく見下ろしている。
「やがて訪れる安寧のときまで、せめては、子供たちと共にいる喜びを」
 ふんわりと、場違いなほど柔らかな声を残し、Jは踵を返してイーファの背に飛び乗った。
「あの、Jくん!」
「さっきはありがとう。あと、お騒がせしました」
 ばさりと翼を鳴らして宙に駆け出しはじめたイーファの上から、レツの声に呼び止められたJがにこりと微笑みかける。
「その人は、きっとすぐに眠るよ。新しい神官を、要請したほうがいいかもしれない」
「君はどうするの?」
 続けられた説明はとりあえず捨て置き、レツは問いかける。
『どこへなりとも。行き着く場所がないのは、行くべき場所がないこと。限りのない自由』
「そうだね。ボクらはどこにでも行ける。また、新しい住処を探すよ」
 悠然と答えたイーファに同調し、Jは吹き抜ける風に瞳を眇める。
「さようなら。久しぶりに人と話せて、楽しかったよ。ありがとう」
 あまりにまっすぐな笑顔に、レツは続けるべき言葉が見つけられない。
『行くぞ』
「うん」
「あ、ちょっと待って!」
 そうこうしている間に、イーファは高く天へと上り、夜闇に紛れてしまう。レツの制止はむなしく宙に響き、後には渦巻く風だけが残された。


***

おしまいです。
超オリキャラでしたが、イーファはエヴォリューションをイメージしていました。
Evo → エボ → イヴ(この辺に苦しい私の妄想が見え隠れします / 苦笑) → イーファ
みたいな。
いや、だってほら、守護獣とか!
そういうのって、お約束じゃないですか!

貧困で固定的な観念ばかりですが、王道のファンタジーが好きなんです。ええ。

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