忍者ブログ
文字通りの掃き溜め。覚書とも、下書きとも。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


 渡したはずのものが戻ってくるとか、贈ったはずのもののお裾分けにあずかるとか、そういうのはとても困ると、しみじみ彼は思う。
 で、少し違うとはいえ、誰かのために贈られたもののお裾分けに意味もなくあずかるとか、それを託されるとか、そういうのもとても困るのだ。繰り返すが、とても、本当に、ものすごく困るのだ。
「いやぁ、だってさ。僕が持っていても枯らしちゃうだけじゃないか」
「そうそう。大体、適材適所、という言葉があるだろう?」
「向き不向きに年齢は関係ないからね。ようは経験と相性、すなわち天賦の才ってやつだよ」
「ああ、いいこと言いますね。まさにそれですよ、天賦の才」
「そういうこと。だから、君が気にすることはないんだよ」
 まったくもって見事なチームワークを発揮して、ね、と異口同音に念押しされる。
 相手が念押しであると言い張るため「念押し」という表記を用いることへの反論は諦めたが、内実は「ごり押し」だとか「ダメ押し」だとか、そんな感じである。
「大体、博士だって気にしないよ」
「というよりもむしろ、博士に渡す分も、同じ運命を辿ると思うね」
「賛成票を追加一票で」
「こちらからは組織票を入れましょう」
「というよりも、どうしていまさら気にするのか、っていう方が気になるよ。毎年のことじゃないか。今年は何かあったのかい?」
「………いえ、別に特に何かがあった、というわけではないんです」
 というか、現在進行形でこうして用意した花束が一箇所に終結している段階で、何かあったとみなして欲しい。まあ、言われてみればたしかに毎年のことなので、これはおいておくとして。
 ただちょっと、学校でも、せっかく担任の先生にみんなで花束を贈ったのに、枯らしてしまっては申し訳ないから、と、そのまま渡し返されたそれを持ち帰って活け終わって、ちょっとだけ複雑な気分に浸っていたところに追い討ちをかけられた、というだけで。
「どうして花束は贈り物の定番なのに、受け取った本人の手元になかなか残らないんでしょう?」
「それは、アレだよ。ハードルの高さの問題だ」
「そうですか?」
「そうだよ」
 要するに、花束は処理に困るから贈り物としては不適当という結論に至るべきなのか。そうか。
 ならば、来年からは年度末の労いに用意していた花束は却下。何としても適度なハードルの贈り物を見繕わねばなるまい。
 別のものでそれなりに見栄えがして贈り物に相応しくてお値段もお手ごろな何かなど、まるで見当もつかない。花束をランク外にしただけで、難易度が劇的な上昇を見せる。
「ああ、なるほど」
 たしかに、ハードルの高さの問題だった。

fin.
PR

Comment
Name
Title
Mail
URL
Comment
Pass   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
[62] [61] [60] [59] [58] [57] [56] [55] [54] [53] [52
«  Back :   HOME   : Next  »
カレンダー
11 2024/12 01
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31
最新コメント
[01/28 スピーカー]
最新トラックバック
ブログ内検索
カウンター
アクセス解析
忍者ブログ [PR]