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「さがしものは、見つかったかい?」
静寂を切り裂いた声は、穏やかで低くて、ひそめようと頑張って、変に掠れていた。
「いいえ」
答える声は、凹凸も温度もなくてひそめる気もなくて、でもやけに小さくぽつりとおちる。
落ちた声の行き先になど頓着する気もなくて、ひとつ息を吸い込んで。
それから、間違いに気づいて吸い込んだ息を吐き出した。
「いいえ、見つかりはしました」
見つかった。見つけた。見つけられた。
ずっとずっと探していたから、見つけるのは意外と簡単だった。
ただ、見つけただけで、その先が見えなくなってしまっただけで。
「まだ、さがしているのかい?」
「――いいえ」
吸い込んだ息はもう残っていなかったから、声は小さく、掠れてしまった。
「いいえ、もう見つけましたから」
今度は、少し嘘をついた。
さがしものは背中にあって、振り返れば見つかるけれど。
振り返らなければ見つけられなくて、振り返るには遠かった。
――僕の星にはまだ還れない。砂漠の中に井戸を見つけたから。
***
星の王子様をふと思い出して、そんな雰囲気で。
とりあえず、二周年小話はこれにてひと段落。
ありがとうございました。
一握りの絶望と、抱えきれないほどの希望。
一滴の不可能と、大海のごとき可能性。
溢れんばかりの、それでも強すぎない光と、ささやかながらの、それでも確かに存在する闇。
片方を否定することで片方を崇拝し、双方の存在を認めることのできなかったこれまで。
すべてが覆され、次々に塗り替えられていく世界。
目がまわる。まわる、まわる、まわる。
塗り替える筆を持っているのは、ほかでもない自分だから。
彼らは決して強要したりはしない。
ただ、見せてまわるだけ。連れて歩くだけ。
知らなかった世界へ、見たことのない場所へ、触れたことのない思いへ。
固持する意地を、見栄を、自尊心を、彼らは否定したりはしない。
それらをもってさえも、包み込み、受け入れ、走り抜けられるだけのそれは眩いほどの強さ。
欲してやまなかったもの。
そうありたいと、思い描いてやまなかったもの。
塗り替えられる。塗りつぶされるのではなく、塗り替えられる。
――もう、何一つ棄てられない。引き返すには早すぎる。諦めるには遅すぎる。
***
パラレルのロルくんでもいいかな、と思った短文でした。
なんだかだんだん、祝い事をしているのか何なのかがわからなくなってきてしまいました(苦笑)。
やはり微妙にパラレルっぽいというか、やけに薄暗くなってしまったので続きは下から。
明るくほのぼのしたのが書けないのは、どうしてなんでしょうか……。
連日投稿は……(略)。
第三弾です。今日はパラレル設定。
固有名詞は出てきませんけど、ちょっと独特な空気になってしまったので、本文は免疫のある方のみでお願いします。
どういう分類をすればいいのかよくわからないんです。
ファンタジー風味というか、過去が異様ににおうというか、そんな感じ?
すっと腕を天に掲げて、彼らはめいっぱいの笑顔を添えた声を放つ。
人がひしめいていて、天からも地からも、たくさんの音があふれかえっているここはきっと雑踏の只中にも負けないほどのにぎやかさ。それらを縫って、凛と届くのは大好きな彼らの音。
「――!!」
名前を呼んでくれるたびに、嬉しかったり切なかったり、胸の中でひしめく感情は本当に忙しく色合いを変えるんだ。
言葉をかけてくれるたびに、楽しかったり目を瞠らされたり、全身の筋繊維が本当に休むまもなく打ち震えるんだ。
知っているかな、知らないかな。ボクはひっそりと、幸せを噛み締める。だって幸せだから。
約束はいらない。だって、必要が無いんだから。
ボクはボクの道をがむしゃらに駆け抜けるのに一生懸命で、彼らは彼らの道をひたむきに駆け抜けるのに一生懸命で。
余分な時間はどこにも無くて、ゆとりなんかどこにも無くて、いつだっていっぱいいっぱいだけど。
でも、約束はいらない。だって、遠くたって、こんなに近くにいるんだから。
――君たちがボクを呼ぶ。約束のない先で、まるで魔法のように。
***
二周年記念小話第三弾でした。
スピッツの『魔法のコトバ』を聞いててインスパイア。
いい曲ですね。